43.「標準決算書」シートの作成
1.流動資産・流動負債勘定の入力
- 「売掛金」欄に合算して入力すべき科目例
売掛金、電子記録債権、 完成工事未収入金、営業未収入金 、未収契約料、流動化受益債権 等 - 「買掛金」欄に合算して入力すべき科目例
買掛金、電子記録債務、工事未払金、営業未払金 等 - 「棚卸資産」欄に合算して入力すべき科目例
商品・製品、仕掛品、原材料・貯蔵品、未成工事支出金、販売用不動産、開発用土地 等
2.特定のオフバランス勘定のオンバランス化入力
「割引手形」「割引電子記録債権」「裏書譲渡手形」の3勘定は、有価証券報告書においてはBS勘定としては表示されない、いわゆるオフバランス勘定となっているので、これをオンバランス化するために、「標準決算書」シートの該当欄に金額を入力し、BS原データの金額を修正する必要があります。
これら3つのオフバランス勘定をオンバランスに修正しなければならない理由は、それらの勘定の性格にあります。
「割引手形」「割引電子記録債権」とは、資産勘定である受取手形、実態売掛金勘定である電子記録債権を使用して銀行から資金調達をしたことを示す勘定科目です。
一方「裏書譲渡手形」とは、代金支払いのために自分で支払手形を発行するのではなく、受取手形を流用して支払ったことを示す勘定科目です。
「割引手形」「割引電子記録債権」の場合は、銀行からの資金調達により、受取手形や電子記録債権が実態回収されたとみなされてBS資産から消える扱いとなり、「裏書譲渡手形」の場合は実態代金支払が終わったとみなされて、支払債務が減少すると共に同額の受取手形が資産勘定から消える扱いとなっています。
ところがこれらの回収や支払は、現実のキャッシュ回収、現実のキャッシュ支払と同じ効果はもたず、将来当該手形や電子記録債権の相手が支払不能に陥った場合は、銀行からの買取請求、あるいは支払先からの支払請求を受けて復活することになるのです。
特に「割引手形」「割引電子記録債権」は、銀行の立場から見れば明らかな金融取引であり、銀行実務上も融資金扱いされているはずです。
一方、「裏書譲渡手形」の実態は、支払手形の発行と同じですから、手形決済されるまではキャッシュ支払完了とはみなせません。
よってキャッシュ実現未済の売掛債権あるいは支払債務としてオンバランス化しなければならないと考えるのです。
具体的には、
①有価証券報告書・単体財務諸表・注記事項の中の「貸借対照表関連」の内容を確認します。そこに上記3勘定のどれかの金額記載があれば修正が必要なので②以下の作業を行います。記載がなければ原データそのままの数字で入力し、修正の必要はありません。
②3勘定どれかの記載があった場合、まず「標準決算書」シートの該当科目にその金額を入力します。
③勘定が「割引手形」または「裏書譲渡手形」の場合は、当該金額を受取手形の金額に加算修正します。
④勘定が「割引電子記録債権」の場合は、当該金額を売掛金の金額に加算修正します。
⑤②から④の入力によって、原データの合計金額が合わなくなりますから、「流動資産合計」「資産合計」「流動負債合計」「負債合計」「負債純資産合計」の5個所の合計額欄の金額を3勘定の合計金額分加算した金額に修正します。
以上でオンバランス化入力は完了です。
3.「その他」欄の入力
「標準決算書」シートの勘定科目は、「結果表示」シートの作成に必要な勘定科目だけを入力するフォームとなっている結果、入力できない原決算書の勘定科目が発生します。
そこで、「標準決算書」シートにない勘定科目をすべて「その他」欄に集約入力する必要があります。
このためにいちいち手計算でそれらの金額を合計入力するのは非効率ですから、「その他」欄の金額セルにあらかじめ計算式を設定しておくのがお勧めです。
具体的には、EXCELの計算式を「合計金額ー標準決算書・その他欄以外の勘定科目合計金額」と設定しておきます。
4.「配当金」「減価償却費」欄の入力
「配当金」と「減価償却費」は、BSとPLに記載されていない勘定科目ですが、利益とキャッシュ利益の差を生む要因ですから、かならずデータとして取り込む必要があります。
「配当金」は、有価証券報告書ではPLに続いて表示される「株主資本変動計算書」の中に記載されていますから、その金額を「標準決算書」シートに転記します。
「減価償却費」は少し厄介で、PLの「販売費一般管理費」の内訳勘定に記載されている減価償却費を転記するのは間違いです。
メーカの減価償却費は、「販売費一般管理費」以外に製造原価にも含まれていますが、有価証券報告書で製造原価報告書が開示されている例は極めて少ないのです。
減価償却費の全額を知るためには、有価証券報告書・単体財務データの後に続く「附属明細表」の「有形固定資産等明細表」に記載されている「当期償却額」の合計額を有形固定資産と無形固定資産に分けて、「標準決算書」シートの該当欄に転記します。
「標準決算書」シート作成上の注意点は以上です。

